伝統芸能共育コーディネーター 連載エッセイ

【第1回】柴垣治樹先生
『雅楽の楽器紹介 その1【笙(しょう)】~天から差し込む光を表す音色~』

皆さん初めまして。名古屋を中心に雅楽の活動をしている主韻会の柴垣治樹です。

さて、突然ですが、皆さんは日本で一番歴史の古い伝統芸能は何かご存知ですか?
その答えは、1,500年以上の歴史を誇る“雅楽”なんです。雅楽は日本の重要無形文化財であり、ユネスコ無形文化遺産にも指定されています。
とはいえ、雅楽をよくご存知でない方も多いと思いますので、まずは雅楽で用いる楽器を紹介させて頂きたいと思います。最初にご紹介するのは笙(しょう)です。
笙は、奈良時代に雅楽とともに大陸から伝わった楽器です。笙の形は翼を立てて休んでいる鳳凰に見立てられ、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれます。

頭(かしら)と呼ばれる部分の上に17本の細い竹管を円形に配置し、竹管に空けられた指穴を押さえ、頭の横側に空けられた吹口より息を吸ったり吐いたりして、17本のうち15本の竹管の下部に付けられた金属製の簧(した:リード)を振動させて音を出します。
これは西洋のパイプオルガンのリード管と同じ原理で、一説には笙がパイプオルガンのルーツであるともいわれています。また、ハーモニカ等とは異なり、吸っても吹いても同じ音が出せるため、他の吹奏楽器のような息継ぎが不要で、同じ音を鳴らし続けることが可能なことも大きな特徴です。
現代では雅楽に留まらず、管弦楽や室内楽の楽器や、声楽曲の伴奏楽器として用いられることもあり、様々な分野で笙の音が活躍するようになっています。

「笙から生まれた日本語」
風流を解さない、人情の機微がわからない人を野暮な人、と言いますね。この野暮、最近ではあまり耳にしなくなりましたが、実は笙が語源です。笙は17本の竹管を組み合わせた構造でなんとも雅な和音を奏でます。この17管にはそれぞれ音階が割り当てられ、1管ずつ名前がつけられています。その中で也(や)と毛(もう)という2管は長い年月の間に音的に省かれてしまったようで管として存在はしていても何と音が出ません。そう、ただそこにあるだけなんです。ここから「や・もう」は無駄なことを意味するようになり、「やもう」が「やぼ」になり、「野暮」になったと言われています。

  • 撮影:吉澤 忍

写真:柴垣 治樹先生

雅楽演奏家
雅楽企画者

柴垣 治樹先生

更新日:2016.06.16

  1. prev
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 4
  6. 5
  7. 6
  8. 7
  9. 8
  10. 9